誰でも簡単、キマる邪悪なおやつ
はじめに
現代人は突き詰めると砂糖と塩と油に脳をやられている。
現代人が短絡的に喜ぶ食事を考えた時、砂糖と塩と油の不快感を感じさせずに大量摂取させられる料理が幸福感をおおむね最大化する(要出典)。
今回は、その中で砂糖と油を効率よく摂取させられる、簡単で邪悪なおやつを紹介したい。
僕が今日説明する邪悪なおやつとはラスクである。しかも、パンの耳をつかったやつだ。
そもそも、食パンというのはかなり不健康な食い物だとされている(要出典)。
その中でも、特にパンの耳は極めて危険な部位で、パンの悪い部分が濃縮されていると言える。しかし、だからこそ旨い。
基本の手順
まず、パンの耳で作るラスクの基本的な調理方法について確認しておこう。 ラスクにするパンの耳は、はっきり言って何でもいい。しかし、ダブルソフトみたいに柔らかすぎるやつはダメだ。 同じヤマザキなら、超芳醇みたいなやつがいい。
- パンの耳を食い易い一口大に切る。
- パンの耳がカリっとするまで油で炒める
- 砂糖をパンの耳の上から振りかけて、弱火でゆっくり加熱しながらパンの耳と溶けた砂糖が絡むように混ぜる
- 焦げない程度に炒めて、外側が固くなったらクッキングシートをしいた皿に並べて冷ます
ラスクの基本的な作り方はこれだけだ。 人類の堕落要素である炭水化物と油と砂糖だけで構成される極めて純度の高い邪悪さを持つ食い物であることが分かって貰えるだろう。
砂糖は上白糖だろうが、三温糖だろうが、グラニュー糖だろうが、なんでも良い。 油も大体なんでもいい、オリーブオイルがおススメだが、サラダ油でもグレープシードオイルでもいい。ゴマ油は上級者向けなのでおススメしない。 油を食う料理なので、開封したての酸化していない油を使った方が旨いが、些細な問題だ。
ついでにちょっとしたコツを書き加えておくと、油は一気に使うんじゃなくて、パンの耳を炒めながら三回くらいに分けて使うといい。 全部のパンの耳に油がいきわたるようにすると、味が安定する。
何となく分かっているだろうが、これだけでは特においしいラスクにはならない。 基礎は大事だが、それだけで事を為せるわけではないのだ。
食感の改善
ところで、旨いラスクとは、どんなものだろうか? 外側は少し堅めで、中はサクサクと崩れるようなのが旨いラスクだと僕は考えている。
ちなみに、パンの耳を切って炒めるだけでは、そのような食感を得る事は難しい。 何故なら、パンの耳には多 くの水分が含まれているからだ。
つまり、この水分を除去すればサクサクとした食感を生み出せる。 水分を排除する簡単な方法は何だろうか?まさかオーブンでラスクを真面目に焼くとか、レンジで水分を除去しながら加熱するとかはやりたくない。
例えば、袋を開けたまま部屋の中に放置することが考えられるが、これはおススメできない。 何故なら衛生的でないからだ。特に今のような梅雨の時期はパンがカビる。 カビたパンを食って大丈夫な人間はそう多くない、僕だってそうだ。腹をこわす。
梅雨の時期に食パンを比較的安全に保存する方法がある。そう、冷凍だ。 そして、冷凍した後にレンジで解凍したパンは残念なことに水分が抜けてボソボソとした食感になる。 つまり、冷凍保存してマズくなったパンは、ラスクに転用するとおいしいのだ。
では、手順を確認しよう。
- 冷凍したパンの耳をレンジで解凍する
- パンの耳を食い易い一口大に切る。
- パンの耳がカリっとするまで油で炒める
- 砂糖をパンの耳の上から振りかけて、弱火でゆっくり加熱しながらパンの耳と溶けた砂糖が絡むように混ぜる
- 焦げない程度に炒めて、外側が固くなったらクッキングシートをしいた皿に並べて冷ます
冷凍保存によって抜けた水分の代わりに油を埋めるのが、このラスクの肝だ。 十分に油を吸い込んだパンの耳を丁寧に炒めると、油が水分を排除するのでサクサク感を得られる。
これが、最初のラスク。スタートアップラスクである。
キマる調味料
スタートアップラスクは、自分ひとりで食べるなら兎も角、友人や家族にドヤれるようなものではない。
ラスクの食材と調理法はシンプル過ぎる。つまり、調理する人間の技量が結果に直接影響する。 我々が求めているのは、そういうのではない。とはいえ、おやつなのであんまり手間をかけたくはない。
そこで、ラスクに使う定番のキマる調味料を紹介しよう。シナモンだ。 アッパー系の香辛料でカレーやお菓子によく使われる。ラスクでも砂糖の三割から五割程度の容量でシナモンを混ぜた上でパンの耳に絡めるとよい。
ついでに、油もキマるやつに変えよう。そう、みんな大好き有塩バターだ。パン一枚分の耳あたり 10g くらい使うと素晴らしい味わいになる。 素晴らしいことに有塩バターの塩味が、砂糖の甘味をより引き立ててくれるのだ。
シナモンとバターを使ったラスクの手順はこうだ。
- 冷凍したパンの耳をレンジで解凍する
- パンの耳を食い易い一口大に切る。
- バターをレンジで温めて完全に溶かす
- パンの耳がカリっとするまで溶かしたバターで炒める
- シナモンと砂糖を適当な器で均等になるように混ぜる
- 砂糖とシナモンの混合物をパンの耳の上から振りかけて、弱火でゆっくり加熱しながらパンの耳と溶けた砂糖が絡むように混ぜる
- 焦げない程度に炒めて、外側が固くなったらクッキングシートをしいた皿に並べて冷ます
これがキマるラスク。アッパーラスクだ。
そうは言っても昼間に食うようなアッパーラスクに後ろ暗さなどある筈もなく、大体平和な味であって特に危険はない。 ところで、堕落した人間がおやつを食べるのは、果たして昼間だけなんだろうか?
断じて否!
堕落した人間は日が落ちた後、深夜におやつを食べる。しかし、アッパーラスクに深夜性はない。 いや、夜に食っても旨いが闇夜の味わいではないのだ。
中毒性のある調味料
アッパーラスクに中毒性はなく、明るい昼間の味わいだ。 僕らが求めているのは、もっと中毒性のあるやつだ。一度食べたら忘れられず何度でも食いたくなるラスク。
こじゃれたレストランで出てくるが、実際にはかなり邪悪なあいつを自宅で簡単に作る方法は無いだろうか?
勘の良いあなたなら、次に出てくる食材を予想できるだろう。そう、ニンニクだ。 ニンニクはチューブに入ったペースト状のやつを使うと楽だが、自分ですりおろしてもいい。 パン一枚分の耳に対して 10g 程度のバターを使うことは変わり無いが、雑に溶かしたバターとニンニクを混ぜてガーリックバターを作る。
と言うわけで、ニンニクを使うラスクの手順はこうだ。
- 冷凍したパンの耳をレンジで解凍する
- パンの耳を食い易い一口大に切る。
- バターを溶かしてガーリックバターを作る
- 弱火でガーリックバターを使って、パンの耳がカリっとするまで炒める
- 焦げない程度に炒めて、外側が固くなったらクッキングシートをしいた皿に並べて冷ます
客に出す時は、見た目上のこじゃれ感が増すので乾燥バジルをガーリックバターに混ぜて使うと良いだろう。
これが、昼間の味わいであるラスクを反転させた邪悪なラスク、ジャンキーラスクである。 ジャンキーラスクは、飲酒を伴わない食事には合わないと考えてよい。ワインやビール、ウイスキーなどの洋酒と併せると簡単に堕落できるだろう。 もし、飲酒しながらジャンキーラスクを食べるなら、ガーリックバターを作る際に小さじ1程度食塩やクレイジーソルトを足すと、更に良い味になる。
まとめ
アッパーラスクとジャンキーラスクは、ある種のフレームワークでありガイドラインとなるものだ。 砂糖や油の組み合わせや、パンの種類を変えることで、よりオリジナリティのあるラスクを作れるだろう。 例えば、アッパーラスクであれば、ホイップクリームをつけながら食べると更にエネルギッシュな味わいが得られる。 ジャンキーラスクに是非追加して欲しいのは、粗挽きの黒胡椒だ。 ラスクに手をつける直前にミルで胡椒をふりながら食うと病みつきになる。
これを読んだあなたが新しいラスクの境地を開き、より多様性のある食生活に至ることを願って結びとする。